論文データベースの検索式って自分で組むのは結構難しいですよね。そんなときにChatGPTやGeminiなどの大規模言語モデルを活用すると簡単に式を組んでくれるので、論文検索で困ったときにはぜひ使ってもらえると良いと思います。
検索式の概要とその必要性について簡単にまとめます。
そもそも検索式って必要?
AIでの検索が興隆するこのご時世に検索式は必要なのでしょうか?
これまでAI検索ツールを使いまくってきた結果、私は検索式もまだまだ必要だと感じます。いくつか理由がありますが、一番大きいのは有料論文へのアクセスの問題です。
AI検索ツールは多くの場合オープンアクセスの論文しか全文を読むことができません。となると検索した際に出てくる論文にも偏りが生じやすく、本当に必要な有料の論文にアクセスできているのかどうかが分かりません。
重要な論文というのはオープンアクセスではないことも多々ありますので、こうした制限によって見落とすのは致命的です。
昨今のLLMを巡る著作権などの訴訟の流れを見る限り、有料のものを易々とLLMの検索に任せる流れはあまり想定できないので、今後もここは大きく変わらないと思います。
OpenEvidenceのような一部のツールではPaywallを突破できるようにジャーナル側と連携をしているものがありますが、あくまでこれは限定的な用途(=連携するジャーナルが少なくて済む)だからこそできる技だと思います。
当然検索式ではこうした記事も含めて検索ができますので必要性が高いと言えます。
もう一つは再現性の問題です。
AI検索はクエリ(ユーザーからの質問)を複数のキーワード検索に変換したり、文章をベクトルにして数値化し、似たものを探したりしていますが、さらにはその後文献の内容など複雑なプロセスを踏んでAIエージェントの選抜により、情報が絞り込まれます。
この過程というのは正直ユーザーにはよく分かりません。そのため繰り返し検索しても網羅できているのかどうかがイマイチよく分からないのです。
Elicitのようなツールは情報選抜の過程をできるだけ明瞭になるようにしていますが、実際にその中身を上手く調整できるかと言われるとなかなか難しいです。
その点キーワード検索はユーザーが再現性をもって文献抽出ができるため、結果をみながら複数のキーワードを試すことで網羅的に文献をみていくことができます。実際、AI検索と引用分析を使って結構調べつくしたと思っていても、キーワード検索すると「こんなに内容に合致するのが見つかってなかったのか!」ということがあります。
こうした点から最近はキーワード検索もしっかり組み合わせるようにより意識しています。
キーワード検索にChatGPTを役立てる
ChatGPTなどのLLMであれば検索式を作ることももちろんやってくれます。
例えば生命医学系のデータベースPubmedで検索式を作るように指示をすると以下の様に組み上げてくれます。
プロンプト:「細胞生物学のテクニックについて書かれた上質なレビューを取り扱っているジャーナルとそのレビュー記事検索をpubmedで網羅的にできるような検索式をつくってください。」
▼ChatGPTからの答え
(
キーワード1[tiab] OR 同義語[tiab] OR 関連語[tiab]
)
AND review[pt]
AND ("2015/01/01"[dp] : "3000"[dp])
AND (
"Nat Rev Methods Primers"[ta]
OR "Nat Methods"[ta]
OR "Cell Rep Methods"[ta]
OR "Trends Cell Biol"[ta]
OR "Trends Biotechnol"[ta]
OR "Annu Rev Cell Dev Biol"[ta]
)
[tiab]はタイトル・アブストラクトに対しての検索、[ta]はジャーナル指定のための検索タグです。こういったことも確認しながら検索式を組み立てていくと自分でも検索内容がよく分かるようになります。
あとはここのキーワードに知りたいトピックを入れればOKなわけです。必要なジャーナルや欲しい記事タイプの選抜もできますので、これも相談しながら決めていくことができます。
最近はこんな感じで注目度の高いジャーナルのレビューを検索し、アラート設定することで最新情報をまとめて得られるようにしています。以下の記事で紹介している方法ですと、最新情報をpodcastにして聞いたり、動画にしたりもできますのでおススメです。


検索したときにヒット数が多い場合はどう絞り込むかをまたLLMに相談しつつ、検索式を理解しながら進めていくと検索も上達していきます。
まとめ
AI検索ツールが便利になった今でも、有料論文へのアクセスや再現性の観点から従来のキーワード検索は依然として重要です。検索式の作成は難しいので、ChatGPTなどのLLMを活用し、対話しながら使っていくのがオススメです。AI検索とキーワード検索を適切に組み合わせることで、より網羅的で質の高い文献調査が可能になると思います。ぜひどんどん活用していきましょう。




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