みなさんこんにちは、tosukeです。
論文がいくつか集まってきた時に以下の様な問題があることはないですか?
「この論文で私の研究に関する部分はどこに書いてある?」
「引用したい情報がどの部分にあるのか忘れてしまった…」
「似たような研究を何本も読み比べたいのに、時間が足りない」
「methodsの記載だけ比較したいのに、全部の論文を開くのは面倒」
こうした悩みを感じたことがあるなら、GoogleのAIリサーチ支援ツール「Notebook LM」が間違いなく役に立ちます。
複数の論文や資料をアップロードするだけで、AIが内容を理解・整理し、必要な情報を引用付きで抜粋・要約してくれる画期的なツールです。人気も高く、すでにiphoneやAndroid向けのアプリにもなっていますので、ぜひ便利に使い倒しましょう。
動画での解説はこちら▼
Notebook LMとは?
Notebook LMは、Googleが開発したAIによる資料管理・要約支援ツールです。
PDFファイルやGoogleドキュメント、WebサイトのURL、さらには音声や動画などをソースとして登録すると、AIが内容を読み取り、
要約(目次や概要)
よくある質問への回答(FAQ)
引用付きでのチャット形式の応答
マインドマップや時系列整理(Timeline)の自動生成
などを行ってくれます。日本語の文献や日本語での質問にも対応しているため、日本の研究者にも使えます。
主な機能と使い方
Notebook LMの公式ページにまずアクセスしましょう。
そうしたら新規のノートブックの作成を選びます。この1つのノートブックの中に資料を入れて質問したりしていくのが基本的な使い方です。
次にノートブックに使う資料(ソース)を求められるので、自分のPCからアップロードするか、あるいはウェブ上から検索するように指示します。
資料を選んだあとは具体的には以下の様な機能が利用できます。
要約の自動生成
アップロードした資料を構造化してくれます。音声や動画であれば文字起こしまでやってくれます。チャット形式の質問応答
「この論文の結論は?」「A論文とB論文の違いは?」など、自由に質問可能です。
回答には該当箇所の引用が明示されるため、出典の確認も簡単です。さらにチャット形式のため、閉じなければ前の内容を引き継ぎながら回答してくれます。回答にはGeminiが使用されており、精度もある程度高いです。アウトプット形式の豊富さ
FAQ(質問と回答)
学習用ガイド
時系列整理
報告書形式の要約
マインドマップ
音声要約
メインの画面は以下のようになっており左側にすべてのsource、真ん中にチャット画面、右側にaudioや保存したnoteなどが表示されるようになっています。この例ではソースの論文のmethodsについて聞いていますが、うまく抜粋してまとめてくれています。

特に音声要約はかなり自然な英語で二人の掛け合いを作ることができ、内容を聞き流しながら把握するには重宝します。スマホのアプリとして入れておけば自分専用のpodcastのように使うこともできますので、かなり楽しいです。
音声要約のカスタマイズも徐々にできるようになってきており、下記のような画面で長さやどこに焦点を当ててほしいかを選ぶこともできます。
さらに、現在は「日本語」など英語以外にも対応していますので、英語が苦手な方でも利用しやすくなっています。しかもinteractive modeがβ版として追加されていますので、会話も可能となっています。活用の幅が広がりますね。
具体的な活用例
Notebook LMは、単に要約を出力するだけではありません。引用付き回答機能によって以下のような実践的な使い方が可能です。
1. 自分の研究に関連する記述を抜粋する
たとえば、引用に使えそうな論文を複数(10〜20本程度)集めてNotebook LMに読み込ませます。 その上で、「○○に関する記載を抜き出して」「自分の研究テーマである~と関連がある部分をまとめて」と質問すれば、該当箇所を引用付きで抜粋・整理してくれます。
研究者にとって大事なのは引用付きであることです。どの部分を引用しているかが確認できるため、それをみることでハルシネーションやAIによる間違いを防ぐことができます。
2. methodsの記述だけを比較する
複数の論文の「Materials and Methods」や「実験手法」を比較したいときにも便利です。
「各論文で使われている手法の違いを表にまとめて」「サンプル数と解析手法の記載を抽出して」などの指示に対し、AIが必要な情報をピンポイントで収集・整理してくれます。
3. ジャーナルのWebページから最新論文の要点を収集する
Notebook LMはPDFだけでなく、WebページのURLもソースとして登録可能です。
たとえば、「Nature Neuroscience」や「JAMA Neurology」などの論文一覧ページを追加すれば、掲載中の論文の要点をAIが自動で抽出。まるで最新論文のダイジェスト版を作成してくれるような使い方も可能です。
今回試しにNEJM、JAMA、BMJ、Nature、Scienceのウェブサイトを入れてみましたが、最新のウェブサイトにアクセスして調べてくれるため、新しい論文の情報を総まとめしてくれます。
実際の出力が気になる方は以下を見てみてください。
提供された情報源には、多岐にわたる分野の最新論文が幅広く掲載されています。特に、2025年7月発行の論文が多く見られます。以下に、各情報源から得られる主要な知見を日本語でご紹介します。
JAMA (The Latest Medical Research, Reviews, and Guidelines)
JAMAは、最新の医学研究、レビュー、ガイドラインを提供しており、特に2025年7月18日付で**「Just Published(最新発表)」**の研究レターが複数掲載されています。
- 抗生物質の使用に関する洞察: INSPIRE試験からの知見として、初期の抗生物質選択戦略とその後の抗生物質使用に関する研究が発表されています。また、CPOE(医師によるコンピューターからの処方入力)プロンプトが抗生物質使用量の削減維持に貢献しているという洞察も、編集者の選択として強調されています。
- 肥満と人種差: 米国のアジア系、ネイティブハワイアン、太平洋諸島系成人における肥満のばらつきに関する研究レターがあります。
- 公衆衛生スクリーニング: 救急部門でのC型肝炎スクリーニングの重要性についてのオリジナル調査も掲載されています。
- 寿命の回復不全: パンデミック前の水準に寿命が完全に回復していない現状に関するリサーチレターが注目されています。
「Clinical Review & Education(臨床レビューと教育)」セクションでは、実践に役立つレビューが多数提供されています。
- 早期発症胃腸がん: 早期発症胃腸がんに関するレビューが、音声コンテンツ付きで提供されています。
- 慢性腎臓病: 慢性腎臓病の進行を遅らせるためのガイドラインがまとめられています。
- 男性の下部尿路症状: 男性の下部尿路症状に関するレビューや、動悸、疲労、片頭痛、ウエストナイルウイルスに関する臨床レビューも含まれます。
Nature
Natureは、科学全般にわたる画期的な研究とニュースを提供しており、特に**「Featured Content(注目のコンテンツ)」や「Latest Research articles(最新研究論文)」**として多様な記事が掲載されています。
- AIと核戦争の回避: AIと誤情報が核戦争のリスクを加速させているという警鐘を鳴らす記事や論説が、複数の著者によって発表されています。
- 地震検知の新技術: Googleが数十億の携帯電話のモーションセンサーを利用して世界中の地震を検知し、警報を送るシステムを拡大しているという研究が紹介されています。
- 睡眠と脳のメカニズム: 脳が睡眠から覚醒する仕組みや、「睡眠慣性」というぼんやりした状態と脳活動の特定のパターンとの関連性に関するニュースがあります。また、睡眠欲求のミトコンドリア起源に関する研究も報告されています。
- 数学の統一理論: 異なる数学分野間の橋渡しとなる証明が発表され、大きな進歩として注目されています。
- 健康データベースの悪用: オープンアクセス健康データベースが低品質な論文作成に悪用されている問題が提起されています。
- 微生物と健康: 腸内細菌が生成するイミダゾールプロピオン酸が動脈硬化症と関連し、その治療標的となる可能性が示唆されています。
- がん研究の進展: 卵巣がんにおけるゲノム重複の広がりとその免疫回避における役割を明らかにする単一細胞解析の論文や、病理指向型マルチプレックス解析による統合的な疾患マッピングのフレームワークが紹介されています。
- 気候変動と入院負担: 気候変動に関連する入院負担に関する研究も行われています。
Science | AAAS
Scienceは、広範な科学分野における最先端の研究、ニュース、解説を提供しています。特に**「First Release(速報)」や「Latest News(最新ニュース)」**に注目すべき記事が多数あります。
- ロボット技術の進歩: 生体模倣のソフト・リジッド構造を持つロボット(象のロボットの例)や、言語誘導型模倣学習フレームワークによる自律的なロボット手術に関する研究が発表されています。
- RNA医薬品の経口投与: mRNAを腸に経口投与するためのカプセルベースのデバイス「RNACap」が開発され、腸疾患の治療への応用が期待されています。
- 神経炎症の抑制: アストロサイトにおけるRIPK3キナーゼが、ウイルス性脳炎マウスモデルでSerpinA3Nの産生を誘導することで保護的な抗炎症作用を発揮することが示されています。
- 研究資金とAI: AI生成型研究計画書への懸念からNIHが科学者への申請数を制限したことや、米国の間接経費モデルの複雑さに関するニュースが報じられています。
- 性差の生物学: 母親の年齢や遺伝が子どもの性別比に影響を与える可能性を示唆する研究も発表されています。
- 鮫の生態研究: 致命的な鮫の襲撃が多発したレユニオン島が、生命を救う鮫の研究拠点となった経緯が特集記事として取り上げられています。
The BMJ (Leading Medical Research, News, Education, Opinion)
The BMJは、主要な医学研究、ニュース、教育、意見を提供する、医療専門家向けの雑誌です。**「Latest articles(最新記事)」**には、臨床実践と公衆衛生に関する多様な視点が掲載されています。
- 子どもの健康と貧困: 英国における「ベッド貧困」(子どもが自分のベッドを持てない状況)が公衆衛生上の危機であり、医師が支援できることについての特集記事があります。
- COVID-19の後遺症: 「ロングCOVID」における認知および精神的健康のアウトカムに関するレビューが提供されています。
- 医療システムと人員: 医師不足、研修システムへの不満、医師助手の役割に関する議論や、医師が警告する「Lengレビュー」の不十分さなど、医療従事者の視点からのニュースや意見が多く見られます。
- 公衆衛生の課題: 中国政府による鉛中毒事件の調査、シリアスな性的虐待の報告、医療におけるデータの扱い方に関する実践ガイドが発表されています。
- 臨床研究と政策: 英国が臨床試験を加速し、新薬へのアクセスを改善する計画を打ち出したことや、嚢胞性線維症の新薬が迅速承認されたことが報じられています。
- 社会問題と医療: 親密なパートナーからの暴力や高齢者虐待、妊娠中の梅毒感染、授乳支援に関するスクリーニング推奨事項など、USPSTFの最新の推奨事項も含まれています。
- 国際的な健康危機: ガザ地区の人道支援と医療状況に関するオープンレターやニュースが複数掲載されており、医療研究者グループが英国政府に行動を促しています。
The New England Journal of Medicine (NEJM)
NEJMは、疾患と臨床実践に関する研究・レビュー記事を掲載する権威ある医学雑誌です。**「Original Article(オリジナル論文)」や「Perspective(見解)」**において、最先端の医療技術や倫理的課題が議論されています。
- 小児心臓移植の進歩: 小児の循環死後臓器提供(DCD)心臓の「オンテーブル再動化」という画期的な症例が報告されており、乳児のドナープール拡大に有望な方法を提供しています。
- ミトコンドリア病の遺伝阻止: ホモプラスミーのミトコンドリアDNA変異を持つ女性が、その遺伝を阻止するための新しい方法(ミトコンドリア提供)をテストした研究が複数発表されています。英国でこのプログラムが実施されるまでの長い道のりや、それを可能にした規制変更の経緯も解説されています。
- 小児胃腸炎の治療: 小児急性胃腸炎と嘔吐の救急外来受診後48時間におけるオンダンセトロンの複数回投与が有益であるという無作為化試験の結果が示されています。
- 胃がんの術前戦略: 切除可能な胃がんおよび胃食道接合部がんにおいて、術前化学療法にデュルバルマブを追加することで、イベントフリー生存期間と病理学的完全奏効率が改善されることが示されています。
- AIと医療の倫理: 医療におけるAIエージェント、自動性、価値整合性、そして学生医師と患者とAIの関係性に関する見解論文が掲載されており、AIが医療に与える影響が多角的に議論されています。
これらの論文は、基礎科学の発見から臨床治療の革新、公衆衛生政策の課題、そしてAIのような新興技術が社会や医療に与える影響まで、現在の科学・医療分野における幅広い関心事を網羅しています。
これらの最新論文を読むことは、まるで広大な知識の海で泳ぐようなものです。一つ一つの論文が、特定の専門分野の深淵に光を当てる強力な水中ライトのような役割を果たし、私たちが見えなかった新たな発見や課題を浮かび上がらせてくれます。そして、これらのライトが照らす範囲を総合することで、現在の科学と医療の全体像を把握し、未来の方向性が見えてくるでしょう。
さらにこれをaudioにすると、自分の興味があるジャーナルに絞ったポッドキャストを聞けるような感じになりますので面白いです。
知っておきたい注意点
最後に注意点をまとめておきます。
無料プランではノート数や質問回数に制限あり(ただ現時点では十分な範囲)
アップロード可能なファイルは最大50件まで
AIの生成結果には誤りもあり得るため、最終的な確認は必須
言うまでもありませんが個人情報や機密情報はアップロードしないように注意
まとめ:Notebook LMは研究の心強いパートナー
Notebook LMは、「読む」「比較する」「まとめる」といった研究活動の時間と労力を大幅に削減してくれる強力なツールです。
特に複数の文献を扱う場面では、論文レビュー・研究法比較・最新情報の収集など幅広い用途に対応できます。しかも簡単かつ無料で利用でき、日本語資料にも対応しているため、試してみて損はありません。
当ブログで紹介している中でも群を抜いてオススメできるツールですので、ぜひ一度使ってみてください。
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