※本記事のリンクにはアフィリエイトを含みます
近年、AIを活用した論文検索ツールは雨後の筍のごとく出現してまして、アップデートも頻回です。さらに論文をただ検索するだけでなく、引用情報やトピック抽出、ディープリサーチ機能など多機能化も進んでいます。
そこで本記事では、2025年版として主要な論文検索ツールの概要や特徴とそのアップデート内容についてをまとめて紹介します。動画版は以下です。
動画もかなり長くなってしまったので前編・後編に分けており、こちらの記事も併せて2記事としています。
後編はこちら。
論文検索ツールに見られる3つの主な機能
多くのツールでは、以下の3つの機能を中心に提供しています。
- 引用付きで回答してくれる機能
ユーザーの質問に対して、AIが関連する論文を番号付きで引用しながら短い要約を示してくれます。 - 表形式で回答をまとめてくれる機能
質問に対する回答を表に整理してくれるので、論文の概要や実験デザインなどを比較しやすくなります。 - トピックを自動抽出して文献をまとめる機能
質問内容に関連する用語やトピックを洗い出し、どの文献がどのトピックに紐づくかを自動的に整理・表示します。
また、2024年後半以降「ディープリサーチ」と呼ばれる、質問に対して追加のやり取りを重ねてブラッシュアップし、ただ質問に答えるだけではないさらに深掘りした情報を引き出す機能を持つツールも増えています。時間をかけてさらに詳細な情報をAIが検討し、より深いレポートを生成してくれるのが特徴です。
前編では上記の3機能に着目しながら論文検索を専門とするAIを紹介していきます。なお、後編では論文以外にもウェブ検索にも使えるものを紹介しています。
1. Consensus
公式ページはこちら▼

特徴
- このツールの持つ機能:①引用付き回答
- 初心者向けのシンプルなインターフェース
- 質問を入力すると、引用元となる文献の番号が自動的に付され、論文リストへ対応づけ
- 日本語にも標準対応している
使い方・魅力

- イエス/ノーで答えられる質問では「コンセンサスメーター」(上図)が表示され、賛成・反対をひと目で確認可能

- 論文のタイプ(観察研究、レビューなど)や被引用数といった情報がアイコン(上図赤矢印)で表示され、直感的に理解しやすい
- 保存機能(セーブ)があるため、気になる文献を後からまとめてチェック可能
注意点
- コンセンサスメーターは便利ですが、当然のように結論の正確性を確かめるためには、必ず元の論文にあたる必要があります。
- 全体的に機能はシンプルなので、まずはAI論文検索ツールを初めて使う方におすすめです。
2. Scispace
公式ページはこちら▼

特徴
- 多機能型の総合ツール、AIツールの中では最も多彩
- ①引用付き回答の生成
- ②表形式での回答
- ③トピック抽出
- 他にも、ライブラリ管理、要約/補助執筆、引用形式の生成…などなど
- ディープレビュー(Deep Review)機能を搭載
- 質問の内容をAIと対話しながらブラッシュアップして、より詳しい検索結果を得られる
ディープレビューについては過去の記事でもまとめました
使い方・魅力

- 引用付き回答では、まずAIが回答文を提示し、下部に文献一覧が表示される
- 表形式のサマリー機能で、アウトカムやメソッドといった必要な項目を自分で追加できる

- 追加機能として、トピックの自動抽出(Find Topics)があり、用語ごとに該当文献を引用付きで示してくれる
注意点
- 無料プランだと検索回数や引用文献数(5件など)に制限あり
- 有料プランは月額12ドル(プランによりもっと高いものも)で、より多くの機能や文献数の参照が可能
- 引用・要約の精度は上がってきているものの、ときどき誤訳も混じるため注意。怪しいときは英語での利用が無難です。
3. Paperguide
Paperguideの公式はこちら▼

特徴
- Scispaceと同様、多機能を備えた総合ツール
- このツールの持つ機能:①引用付き回答、②表形式での回答

- ユーザーインターフェイスがシンプルで、画面がわかりやすい
- 上図のように引用付き回答がありますが、参考文献には「Observational Study」「Top Journal」など補足情報がアイコンで表示され、consensusのようなわかりやすさもあります
使い方・魅力
- メイン画面で質問を入力すると、回答とともにリファレンス一覧が簡潔に表示される
- Analyze in Table Viewという機能で、表形式のサマリーを一覧できる
- ScispaceよりもUIがわかりやすい部分があるため、多機能かつシンプルに使いたい人に向いている
注意点
- 無料でも使えるが、検索回数の制限あり
- AIがまとめてくれる要約や表の構成が論文によってばらつきがある
- 他のツールでもそうですが、自分の研究分野の文献がどの程度うまくまとまるか、よく知っている分野で十分に検証するのがおすすめです
4. Elicit
公式ページはこちら▼

特徴
- このツールの持つ機能:①引用付き回答、②表形式の回答、③トピック抽出
- 論文検索、要約生成、トピック抽出など多彩な機能を持ちながら、非常に質の高い検索結果が得られる印象が強いです
- 特に昨年末に追加されたGet a Research Report機能は人が行うようなシステマティックレビューに似せて検索、レポート作成してくれる機能で今後もかなり期待できます!
- 英語のみ対応という点がややハードル
使い方・魅力

- Find Papers機能
- 質問を入力すると回答(サマリー)を示しつつ、下に論文を表形式で一覧表示
- 追加で「メソッド」「アウトカム」など見たい項目をテーブルに入れてカスタマイズ可能
- トピック抽出機能も充実
- 関連用語や概念を抽出し、それを引用文献と紐づけて表示
- Scispaceの同機能よりも以前からあり、用語の抽出能力も高いと感じます

- Get a Research Report(ディープリサーチ型)
- 時間はかかるものの、システマティックレビューのように詳細かつ丁寧なレポートを生成
- 上図のように論文スクリーニングから選別まで行い、基準についても明示されます
- 無料での利用時は抽出論文数に制限があるが、有料プランにすると数百本など大規模に調べられる
注意点
- 出力が英語限定のため、英語が苦手な方にはハードルが高い
- 論文の網羅性や精度の面では群を抜いているが、日本語対応は不十分
5. Scite
公式ページはこちら▼
特徴
- このツールの持つ機能:①引用付き回答
- 他論文の「引用関係」に強みをもつ、やや特殊な検索ツール
- 特定の論文が、他の文献でどう言及されているかを詳細に追える点がユニーク
使い方・魅力
- AIリサーチ機能でクエリを入力するとそれに対しての回答を出力

- 引用文献を表示する際、どの部分が引用されているのか具体的な文章を提示してくれる(上図赤矢印のように引用文+どのセクションかもわかります)

- Search Strategyというボタンを使えば、自分で検索キーワードを編集して検索結果を調整可能
- どのキーワードで検索したか分かるのは検索時の再現性を得やすく有難いです
- 自分の持っている論文を選択することでそれが他の論文でどのように引用されているかをみられる
- 賛成、反対、言及に分類して、引用のされ方も明らかにしてくれる
注意点
- Sciteは「論文同士の引用関係」を可視化する目的が大きい
- 他のツールに比べ、見た目や要約表示よりも引用のテキスト部分への踏み込みが深い
- 上級者向けで、活用方法を理解すると非常に強力
ツール比較まとめ
最後に表形式で各ツールを比較してみます。
Consensus | Scispace | Paperguide | Elicit | |
---|---|---|---|---|
ツールの目的 | 学術文献の検索 | 検索・読解から執筆まで文献の総合管理 | 検索・読解から執筆まで文献の総合管理 | 学術文献の検索・要約 |
論文検索機能 | 引用付き回答 | 引用付き回答 表作成 トピック抽出 | 引用付き回答 表作成 | 引用付き回答 表作成 トピック抽出 |
月額料金(年間契約最安) | $8.99 | $12 | $9 | $10 |
検索以外の機能 | ほぼなし | 読解補助、ライブラリ 執筆補助、ビデオ作成 | 読解補助、ライブラリ 執筆補助、副詞チェック | ライブラリ |
高精度検索機能 | なし | Deep review | なし | Research report Systematic review |
日本語対応 | 質問、回答ともに可 | 質問、回答、文献要約のいずれも可 | 質問、回答、文献要約のいずれも可 | 質問では可 回答や文献要約は不可 |
ユーザーインターフェース | シンプル | 機能が多く、煩雑 | 比較的シンプル | やや機能が多く、若干煩雑 |
- 無料で試しやすいのはConsensus(一部制限あり)
- 多機能を使いたいならPaperguideやScispace
- 精度重視・深い検索が必要ならElicit、もしくはScispaceのディープレビュー機能
- 論文相互の言及を重視するならScite
まとめ:使い分けが重要
論文検索をどこまでどんな部分で使いたいかで使えるツールは変わってくると思います。
- とにかくシンプルにAI検索を試したい
→ Consensus - 論文執筆や文献管理など多機能に使いたい
→ Scispace、Paperguide - 質と網羅性を重視し、内容を深掘りしたい
→ Elicit - 論文間の引用関係やポジ/ネガ言及を丁寧にチェックしたい
→ Scite
ツールによって得意分野や検索精度は大きく異なります。研究の初期段階でざっと概要をつかむ場合と、本格的に文献を精査したい場合では使うツールも変わってくるでしょう。概要をつかむ程度ならConsensus, Scispace, Paperguideの検索機能でもいいと思います。
ただ、論文を書く段階までしっかり調べるならElicit, Sciteでより幅広く、引用関係も含めた洗い出しをしたり、過去に紹介したResearch Rabbitなどのツールで関連するものをさらに網羅したりする必要があると思います。
また、不十分な引用や要約が出ることもあるので、最終的には必ず原著論文をチェックするのがお約束です。
次回の記事では、PerplexityやResearchGPTなど、総合検索でディープリサーチに強いツールをご紹介します。ぜひそちらもご覧ください。
コメント