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研究論文を読む際、その論文がどのように引用されているかを知ることは、業界内での評価や他の論文との関連性を把握する上で重要です。しかし、引用されている論文を一つひとつ全文読むのは大変ですよね。
そこで今回紹介するのが Scite です。Sciteは、調べた論文がどのように引用されているのか、どのように言及されているのかを詳しく確認できるAI論文検索ツールです。さらに、自分の持っている文献に対しても、すぐに引用情報を確認できます。
動画で使い方もまとめていますのでこちらもどうぞ。
また、引用についてどんな種類があるか、どう考えるべきかは過去の記事でまとめていますのでこちらも参照してください。
Sciteとは?
Sciteという名前は、「science(科学)」の"sci"と「cite(引用)」の"cite"を組み合わせた造語と思われます。その名の通り、引用情報の分析に特化 しており、他のAI論文検索ツールにはない特徴を持っています。

主な機能を順に見ていきましょう。
Research Assistant(リサーチアシスタント)
質問に対する回答を検索
まずは、Research Questionに対する回答を検索するアシスタント機能 です。
これはScispaceやConsensusなど他の論文検索ツールでもみられる機能ではあるのですが、その回答方法において他との大きな違いがあります。
例えば、「脳梗塞の急性期においてヘパリンは有効か?」という質問を入力すると、引用文献付きで回答を生成してくれます。特筆すべき点は、引用文献のどこに該当する内容が記載されているかが示される ことです。(下図)これにより、論文全体を読み込む必要がなく、必要な情報に素早くアクセスできます。

これはSciteが引用文と呼ばれる、他の論文を引用した文章の情報を大量に保有しているからなせる業なんですね。Sciteは19億の引用に関するデータベースを持ちますが、そのうち13億は「引用文」として他の文献で言及されたデータが含まれています。この膨大な情報量が、引用内容に関する精度の高い検索を可能にしています。
賛成・反対・言及の分類
Sciteの大きな特徴の一つが、引用の種類を「賛成(support)」「反対(contrast)」「言及(mention)」の3つに分類 できることです。論文が他の研究でどのように評価されているのかを一目で把握できるのは、研究の立ち位置を確認する際に非常に便利です。

ただし、この分類機能には注意点もあります。まずそもそもsupportやcontrastに当たる分類に入る引用文はあまり多くありません。確かに普段論文を読む上でも、そこまで明確に意見の支持や反対を含む文章は多くないことを考えると、当然ではあるのでしょう。
また、引用の多くは「discussion」部分からのものであり、「results」の部分には適用されにくい印象があります。これはおそらくresultsが通常引用をあまりしないことが多いためでしょう。そのため、対象の論文の研究の本題よりも他の文献の話が表示されてしまう傾向 があります。その場合引用されている別の論文を読めば済む話ではあるのですが、ちょっと間接的な感じにはなってしまいますね。
検索機能のカスタマイズ性
検索方法のカスタマイズが細かくできるのもSciteの強みです。
- 引用元の種類(引用文 or 抄録から取得)
- 文献の数や出版年の範囲指定
- 検索キーワードの編集
特にキーワードの編集機能は便利で、検索結果が期待と異なる場合に自分で好きに調整することができます。Elicit辺りはこの辺の調整がしやすい印象でしたが他のツールに比べるとSciteの良い点かと思います。
ただし、専門的な用語の知識がある程度必要なので、その分野に詳しくない場合には少しハードルが高いかもしれません。
また、英語のみの対応なので、日本語の文献検索には向いていません。
文献データと引用文検索(Search機能)
Sciteでは、特定の論文がどのように引用されているかを調べることができます。加えて、引用文のデータベースから「特定の用語がどのように業界内で扱われているか」を検索する機能 もあります(下図はAlphafoldについて言及されている引用文を検索した例)。

フィルタリング機能も十分あり、PubMedで使われるMeSH(統一的に専門用語を扱う辞書)にも対応していますので、絞り込みにはかなり便利だと思います。
Dashboard(ダッシュボード)機能
ZoteroやMendeleyと連携し、自分が管理している文献データを一括で解析 できるのがダッシュボード機能です。論文管理ソフトを使っている研究者には特に便利でしょう。
Zoteroの場合、コレクション(フォルダのようなもの)ごとに文献を一括してアップロードできます。Zoteroについてご存じない方はこちらを参照してください。やっぱりオープンソースなだけあって連携が多いので便利ですね。
ただ、アップロードの際に微妙にひと手間あって、毎回Zoteroの連携ページに飛ばされるので、そこはなんとかしてほしいところです。
引用データの解析結果ではそこに含まれている文献の引用情報を総合してみたり、論文ごとの引用回数の比較などがしやすいようになっています。また、Scite Index という指標を用いて、引用の賛成・反対の比率を確認できます。ただし、正確性の担保のため、賛成などの引用が100件以上ないと数値が表示されないため、指標として活用できる場面は限られます。
自己文献の引用確認機能
ちなみに上記の文献データの引用情報を総まとめにする機能は自分の出した論文についても使えます。Profileの画面からMy publicationsというのを選ぶと自己文献の登録ができるようになっています。使っている方であればORCID IDを使うとスムーズに連携できます。
これをみると自分の文献がどこでどう引用されているかまで細かくすぐに分かりますので、今後の分野選択や共同研究先、連携の検討にも役立つと思います。自動学術エゴサーチ機能みたいな感じですね。
Reference Check(参考文献チェック)
Sciteには、論文原稿の参考文献リストを自動解析し、引用の傾向や撤回論文の有無をチェックする機能 もあります。
例えば、PDFファイルをアップロードすると、引用された論文の賛成・反対・言及の分類を一括で解析 できます。また、撤回された論文が含まれている場合はアラートを出してくれるため、論文の信頼性を確認するのに役立ちます。
ただし、自分が実際に使った原稿のワードファイル(.docx)を上げてみたのですが、うまく読み込めず1つしかreferenceが出ないことが何度もありました。実際に論文に投稿した原稿でもありますので、一般的な形式だと思うのですが、きちんと作動するかどうかは無料トライアル期間のうちにしっかり試した方が良さそうです。
Chrome拡張機能・Zoteroプラグイン
SciteにはChromeの拡張機能やZoteroのプラグイン も用意されており、インターネット上やZoteroの文献管理画面で、引用の賛成・反対・言及数をチェックできます。
Zoteroプラグインについては実際に使用してみました。下図のように論文の情報画面に、引用の賛成・反対・言及の数が表示されます。

プラグインを導入することで、論文を閲覧しながらSciteの引用情報をさっと確認 できるため、引用関係を意識した論文チェックが簡単に可能になります。またSciteの文献情報ページにもワンクリックで飛べるようになるため、Sciteとの契約をしている状態であれば、みている文献がどう引用されているかもすぐ分かるようになります。契約の有無にかかわらず結構便利なプラグインだと思いますので、一度導入してみることがオススメです。
料金プランと割引情報
Sciteの料金は以下の通りです(2025年1月現在)。
月額プラン:1,631円
年額プラン:979円
比較的安価なツールですが、これ単体で論文検索全体を担うタイプではないと思うので、無料のAI論文検索ツールと組み合わせながら使うのが良いかもしれません。40%オフの割引コード も提供中ですので、興味がある方は以下のリンクから試してみてください。
また、1週間の無料トライアル も提供されているため、まずは試してから判断するのがおすすめです。
まとめ
Sciteは、引用情報の分析に特化したAIツール です。引用文に関する情報は他に類をみない量と質ですので、論文の評価や立ち位置の推察にはめちゃくちゃ有用だと思います。分野に関しての初回の検索というよりは、研究分野についてある程度知識を深めた後に使うと効果的でしょう。
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